姫路で瓦の文化を守る四代目表瓦社長のブログ

姫路生まれ育ったの瓦屋根工事店の四代目社長が住宅屋根のお悩みを解決します。

最先端の工法も100年続けば伝統工法になるんです。

こんばんは。

 

 

久しぶりにブログを書きます。

なんかアレコレ考えてたら書けなくなってしまって、考えまとめてました。

未だにまとまってないけど、これ以上休むと続けられなくなりそうなので

強制発進です。

 

屋根のリフォーム工事をする前段階の調査をする時にチェックする項目として

重要なのが、「土葺き」か「空葺き」かという事です。

「土葺き」は読んで字の如く瓦の下に土を置いて瓦を留めつける工法です。

 

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阪神・淡路大震災の後、屋根の軽量化が耐震性に大きな影響を与えると

いう声が高まって、現在では住宅にはほとんど採用されなくなりました。

メリットは断熱効果が大きくて、真夏でも家の中が涼しい事や少しの

雨漏りなら土が吸収して部屋内まで雨水が侵入しない事。

デメリットは重量がかなりある事と、年数が経つと瓦と土との縁が切れて

ズレやすくなり、最悪の場合は瓦が落下してしまう事です。

 

「空葺き」は瓦の下には土がなく、瓦の下に横桟木を打ち付けて、そこに

釘で瓦を留めつける工法です。

 

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瓦の製造に油圧プレス等が導入されて釘穴を空ける事が容易になった事で

地震前から少しずつ増えてきていた工法で、今はほとんどが「空葺き」です。

メリットは土葺きよりも軽量に出来る事と施工が早い事。

デメリットは釘留めする事によって一枚だけ瓦を交換する必要が出た時に

瓦を外すのが難しい事と釘の素材によっては瓦を割ってしまう可能性がある

という事です。

 

工法としては空葺きの方が当然新しいんですが、施工して30年の空葺きの

家の瓦の傷み具合が50年以上経つ土葺きの家の瓦の傷み具合よりもひどい事も

たまにあります。

土葺きの家というのはほとんどが建築基準法が出来る前の家で、今の住宅の様な

基礎はありません。

延石や割石の上に柱が立っているだけなのでそのままでは不安定ですが、

屋根の土と瓦の重量によってしっかりとした建物になります。

地震が来ると瓦は落ちるし、家も土台となる延石や割石からズレたりもします。

逆に空葺きの家は建築基準法が出来た後の家が多く、柱は基礎にしっかりと

固定されています。

ある程度の規模の地震でも瓦が落ちる事は少ないし、しっかり固定されている

ので家がズレる事もない代わりに、想定以上の強さの地震の場合には家は

倒壊します。

 

どちらがいい・悪いではなくその時々の考え方によって工法は変わります。

現在最善手やと思われている工法が20年後には最悪手やと言われる可能性

もあります。

ただ、50年、100年と長く残っている建物の工法はきっと最善手が詰まって

いるんやろなぁって思います。

最新技術でも長く残れば伝統技術やって事を胆に銘じて長く残る仕事を

していかないといけないなって思った週末でした。